子ども達と箱庭を楽しむために
子ども達と箱庭を楽しむために (箱庭カウンセラーインタビュー)
『教材整備指針』の特別支援教育枠に〈箱庭〉が加えられました。
箱庭と言えば、心理療法で使っていて、専門家でないと扱えないイメージですが、学校で使うためにどのようなことを知っておけばいいのでしょうか。
箱庭の専門家として30年以上の実績を持つカウンセラーの先生に、箱庭制作で起きていることや、学校で扱う際の留意点などを伺ってきました。
箱庭と言えば、心理療法で使っていて、専門家でないと扱えないイメージですが、学校で使うためにどのようなことを知っておけばいいのでしょうか。
箱庭の専門家として30年以上の実績を持つカウンセラーの先生に、箱庭制作で起きていることや、学校で扱う際の留意点などを伺ってきました。
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― 先生はご自身のカウンセリングルームをお持ちですが、そちらにはどのような方がいらっしゃるのでしょうか。
基本的には、社会生活を送るのに問題を感じてる方がほとんどですが、私の場合は、箱庭やコラージュなどの講師もしていますので、いわゆる一般の(健常である方の)、勉強のための制作体験も行っています。
基本的には、社会生活を送るのに問題を感じてる方がほとんどですが、私の場合は、箱庭やコラージュなどの講師もしていますので、いわゆる一般の(健常である方の)、勉強のための制作体験も行っています。
― 小学生や中学生のお子さんもいらっしゃいますか。
お子さんの場合は、保護者の方が連れていらっしゃる場合がほとんどです。親御さんがご自分のお子さんに問題を感じて、どう受け止めていけばよいのかヒントが欲しいと。
― お子さんに対して箱庭を使うこともありますか。
もちろんです。子どもは遊ぶことが大好きですので、砂遊びや人形遊びの延長線のように感じて、純粋に楽しんでくれます。あなたも子どもの頃に、砂場で砂遊びとかやりませんでした?
― やりました、やりました! 砂場で友だちと山を作って、あっちとこっちからトンネルを掘って、「つながった~~!」とか(笑)。
もう夢中になって遊びますよね(笑)。その楽しい感じが箱庭にはあるわけです。
ですが、強要することは絶対にしません。子どもにも大人にも「箱庭作ってみたい?」と声かけして、ご本人が「やりたい」と応答してくれた時だけ使うようにしています。指示的なことは行いません。
カウンセリングに限らず、何かしらの作品作りを強要されても楽しくないですし、下手するとキライになっちゃいますよね。
― 楽しんで箱庭を作ることで、何が起きるのでしょうか。
砂を触っているだけでホッとしますよね。身体感覚的にも開放され、癒されます。砂を触って、話しをする。それだけで「楽しかった」と終わる方もいらっしゃるくらいです。
また、砂箱という『枠』があることが大切で、枠が守られた空間を約束してくれるので、安心して自由にイメージを表現でき、それが開放感や満足感に繋がります。言葉にならない思いを作品として表現することができるので、心が軽くなります。
― お子さんの事例でどんなものがあるかお話いただけますか。
事例を話すと長くなりますよ(笑)。例えば、笑わない子が笑うようになったり、話さない子(場面かん黙)でも言葉が少しずつ出るようになったり。わかりやすい例では、お母さんに今まで言えなかったことを言えるようになったり。
箱庭で満足した体験が重なっていくと、様々な表現ができるようになります。これは大人でも同じです。
― 箱庭制作にそのような効果が見られるなら、ひとりで制作したあと、ひとりで片付けて…でも良いように思いますが。
― ちょっと難しそうです…。具体的にカウンセラーは何をするのでしょうか。
よく『見守り手』や『見守り役』と表現しますが、作者が作品を作っている間は手を出さず、静かに寄り添って見守る。困ったことがあったらお手伝いする程度。まずは、これが大事です。
よく公園の砂場で、子どもが遊んでいるところを、お母さんがじっと見守っている光景がありますよね。あんな感じです。
その見守り手のあり方が、作者にとっては、存在をまるごと受け入れてもらえる安心感に繋がります。これは普段の社会生活では、なかなか得られないものです。この安心感が、自由な表現を可能にしてくれるわけです。
作品が出来上がった後は、その作品について作者と話をします。見守り手は、作品に興味を持ち、関心を持って作品を見せてもらう。
お子さんの場合なら、「すごいねー」とか「おもしろいねー」など声かけしたり、「どんな風に作ったの?」「これは何かな?」などと質問します(大人でもあまり変わりませんが)。そうすると、当人が作品について思ったことを話してくれます。見守り手は聞き役に徹して、作者の言葉や表情、態度を共感を持って受け止め、聴くことが大切です。無理に話を引き出すことはありませんし、作者の作品や言葉にコメントを出す必要もありません。
安心空間で自由に作られた作品には、作者の内面が象徴的な形で表現されています。回を重ねて少しずつ言語化していくことが大事で、そうすることで日常生活が自然と活性化していきます。
― 箱庭と言えば心理を分析するイメージがあるのですが。
専門家は、確かに分析しますが、それというのも、作られた作品を作者とともに深いところで味わうことを大切にするためです。作品は本来作者のもので、本当の意味はご本人が受け止め、自己実現していかれるものですからね。
「箱庭を作る」だけでしたら、それでも良いかもしれませんが、作品をめぐって会話(シェアリング)をすることがとても大事です。
シェアリングをして、作品の世界を見直し、言葉で語り、声にすることで、イメージの世界から、現実の世界に戻していきます。作った作品は非言語で無意識的に表現されていますので、これを他人との対話=コミュニケーションに乗せていくことが大切になってくるわけです。
シェアリングをして、作品の世界を見直し、言葉で語り、声にすることで、イメージの世界から、現実の世界に戻していきます。作った作品は非言語で無意識的に表現されていますので、これを他人との対話=コミュニケーションに乗せていくことが大切になってくるわけです。
― ちょっと難しそうです…。具体的にカウンセラーは何をするのでしょうか。
よく『見守り手』や『見守り役』と表現しますが、作者が作品を作っている間は手を出さず、静かに寄り添って見守る。困ったことがあったらお手伝いする程度。まずは、これが大事です。
よく公園の砂場で、子どもが遊んでいるところを、お母さんがじっと見守っている光景がありますよね。あんな感じです。
その見守り手のあり方が、作者にとっては、存在をまるごと受け入れてもらえる安心感に繋がります。これは普段の社会生活では、なかなか得られないものです。この安心感が、自由な表現を可能にしてくれるわけです。
作品が出来上がった後は、その作品について作者と話をします。見守り手は、作品に興味を持ち、関心を持って作品を見せてもらう。
お子さんの場合なら、「すごいねー」とか「おもしろいねー」など声かけしたり、「どんな風に作ったの?」「これは何かな?」などと質問します(大人でもあまり変わりませんが)。そうすると、当人が作品について思ったことを話してくれます。見守り手は聞き役に徹して、作者の言葉や表情、態度を共感を持って受け止め、聴くことが大切です。無理に話を引き出すことはありませんし、作者の作品や言葉にコメントを出す必要もありません。
安心空間で自由に作られた作品には、作者の内面が象徴的な形で表現されています。回を重ねて少しずつ言語化していくことが大事で、そうすることで日常生活が自然と活性化していきます。
― 箱庭と言えば心理を分析するイメージがあるのですが。
専門家は、確かに分析しますが、それというのも、作られた作品を作者とともに深いところで味わうことを大切にするためです。作品は本来作者のもので、本当の意味はご本人が受け止め、自己実現していかれるものですからね。
― この度、小学校・中学校『教材整備指針』の特別支援教育枠に、箱庭が加えられたのですが 、学校などで心理の専門でない方が使う場合の留意点などありますか。
― 学校ですと、グループで作品を作ることもあるかと思いますが、どのような方法がありますか。
複数で一つの作品作りをする時は、テーマ(『夏休み』『行きたいところ』など)を決めた方が、協力関係やコミュニケーションが活性化します。メンバーによって、作品作りに時間が掛かりそうな場合は、「おもちゃは一人3個まで」などのルールを作り、時間管理がしやすいようにしておくことも大切です。
― 最後に、先生からのメッセージを。
箱庭での表現を楽しいものにしていくために、案内役兼見守り手は大切な役割を担っています。
見守り手をされようと思う方は、まずご自身が箱庭を置いてみることをお勧めします。初めて作るときのドキドキ感、「面白いな」「これはいいぞ」と変化する様々な心の動きや楽しい感触、作品を作った後の満足感を実感していることは大切です。また、実際に箱庭を置いてみると、かなり心のエネルギーを使いますので、それに気付いていることも大事ですね。
先生が楽しんでいると、子ども達も「なに? なに?」と必ず興味を持ってくれると思います。
箱庭を作る時間は学ぶ時間ではなく、自分を表現して遊ぶ時間ですので、やりたくない時には強要しないことが大切です。また、作品を作り出しても手が止まったり、出来上がった作品が、例えば芋虫を一個置いただけで終っても、関心を持って見守り、その情況や作品を受け止める言葉かけをしてあげるといいでしょう。
箱庭の時間は、最初にルール(砂を箱の外に出さない、時間を守るなど)を設定するだけで、あとは、お子さんが自由に表現するのを見守り、楽しく受け止めていくことだと思います。
もしも対応に困難を感じた場合は、スクールカウンセラーや専門家に必ず相談されることをお勧めします。
学校は心理療法の場ではありません。心理療法として扱うなら、専門的な知識と研修やトレーニングが必要です。
箱庭の時間は、最初にルール(砂を箱の外に出さない、時間を守るなど)を設定するだけで、あとは、お子さんが自由に表現するのを見守り、楽しく受け止めていくことだと思います。
もしも対応に困難を感じた場合は、スクールカウンセラーや専門家に必ず相談されることをお勧めします。
学校は心理療法の場ではありません。心理療法として扱うなら、専門的な知識と研修やトレーニングが必要です。
― 学校ですと、グループで作品を作ることもあるかと思いますが、どのような方法がありますか。
複数で一つの作品作りをする時は、テーマ(『夏休み』『行きたいところ』など)を決めた方が、協力関係やコミュニケーションが活性化します。メンバーによって、作品作りに時間が掛かりそうな場合は、「おもちゃは一人3個まで」などのルールを作り、時間管理がしやすいようにしておくことも大切です。
― 最後に、先生からのメッセージを。
箱庭での表現を楽しいものにしていくために、案内役兼見守り手は大切な役割を担っています。
見守り手をされようと思う方は、まずご自身が箱庭を置いてみることをお勧めします。初めて作るときのドキドキ感、「面白いな」「これはいいぞ」と変化する様々な心の動きや楽しい感触、作品を作った後の満足感を実感していることは大切です。また、実際に箱庭を置いてみると、かなり心のエネルギーを使いますので、それに気付いていることも大事ですね。
先生が楽しんでいると、子ども達も「なに? なに?」と必ず興味を持ってくれると思います。