教材を組合わせて使う
教材を組み合わせて使えば、学べるスキルの幅が広がります。
子ども達の円滑なコミュニケーションのために開発された教材・ツールは、組合わせて使うことで、目的や年齢に合ったスキルを学ぶことができ、幅が広がります。
ここでは、教材・ツールの組み合わせと、その使い方の一例をご紹介します。
場所:教室、保健室
他の子どもに対して攻撃的になったり、必要以上に寡黙になったりする子どもは、適切な気持ちの表現ができずに困っている状態です。
表情シールや表情ポスターを使い、室内での活動の前後に気持ちのモニタリングをしてみてください。子ども自身も大人も、視覚的に気持ちを理解することができるので、そのサポートが容易になります。
ネガティブな変化があった場合は、表情カードを用いて、細かい気持ちの変化を時系列に並べさせ、その時の様子を具体的に、気持ちの変化を交えて話してもらいます。子ども自身も「どうしてそのような気持ちになったか」など、言葉にして整理することで、自分の気持ちについて理解を深めることができ、感情をコントロールする力が身につきます。
場所:学校、家庭
ゲームなどの普及により遊びの質が変化し、子ども達は日常生活の中で、コミュニケーション能力を自然と身につけていくのが、なかなか難しくなってきています。不足している部分を補うには、家庭や学校で多少の時間を割いてトレーニングすることも必要です。
まず表情カードを使って、上記「気持ちをコントロールする」のように、自分の気持ちを理解する練習から始めてみましょう。自分の〈気持ち〉を表現できるようになったら、〈考え〉を表現するために、こころかるた(子ども向け)を使用してください。カードの質問に答えることは、①事柄について考え、②自分が考えたことを頭の中でまとめて、③言葉にする練習になります。
誰かを相手に、自分の考えを発言することを躊躇してしまう子どもでも、答える対象が質問カードの場合、気兼ねなく考えたことを発言できる場合が多々あります。子どものコミュニケーション能力を磨く良い機会です。
場所:特別支援教室など
円滑なコミュニケーションを図るためには、自分の気持ちを表現するだけでなく、他者の気持ちを理解できるようになる必要があります。
人の気持ちを表情からくみ取る力を身につけるために、表情ポスターや表情シートで練習してみましょう。特定の表情を指差し「この顔はどんな気持ちだと思う?」と尋ねて、答えてもらうという練習をしていきます。
上手く読み取れるようになったら、SST二択展開カード「このあとどうなるの?」を用います。カードには場面の状況と登場人物の気持ちがイラストで表現されているので、それを見ながら何が起きているのかを考えて答えるように促します。
その後、本来の使用方法(トラブル解決の二者択一)で練習することで、身にまわりで起きている出来事に対する状況把握と、行動を選択し実践する力が徐々に身につきます。
場所:中学校、高校
新しく何かを始めようとする時に、最初からあきらめてしまう子どもがいます。本人はやりたくない理由を並べますが、実のところ「自信がない」ので「失敗する」と思い込んでいることが多いようです。
クラスやグループで、自己肯定感を高めるワークをやってみましょう。まず表情ポスターを使って、今の気持ちや、今何を感じているかを発表し、自分について話す練習をしてください。メンバーは発言者の話をきちんと聞くようにします。
ワークに慣れてきたらフレンドシップアドベンチャーを使います。カードに答え、その答えについて指導者やメンバーと話し合うことで、自分らしいあり方や、物事の前向きな面を発見することができるでしょう。
子ども達が臆することなく、新しい物事にチャレンジできる強さを育ててあげてください。
場所:就業支援
新しい社会人のコミュニケーション能力の低下が取りざたされています。相手の話を聴いて対応することや、自分自身について伝えること、TPOを考えて行動することを学ばないまま、突然社会に出てしまうことが原因と思われます。
グループワークで学ぶことから始めてみましょう。まず、こころかるたを使ってグループの雰囲気をほぐしてください。ルールに沿ってゲームを進めることで、自己表現をすることや、人の話を聞くことに慣れてきます。
次に、フレンドシップアドベンチャーで、各ステージのテーマに沿ったディスカッションを行っていきます。用意されている質問カードは学校での問題を中心にしていますが、社会に出て必要なソーシャルスキルのエッセンスが含まれています。
学生が、尻込みせず自信を持って社会に出られるよう、ぜひお役立て下さい。